音楽的天才とは何なのか

 『カラヤンとフルトヴェングラー』中川右介(幻冬舎新書)

 うーん、しかしこの本はどういうんでしょうね。
 まー、一気に読んでしまいましたから、面白かったのは確かだと思いますが、ちょっと、後味の悪いものが残ったという感じがあるんですがー。

 作者は「あとがき」に「『人柄のいい人』の『お上手な演奏』など、聴きたくない」と書いています(そもそもこの書き方には問題があると僕は思います)が、そして芸術家は芸術的才能のみでは通用しないとも書いてますが、もちろんそれについては僕もある程度納得できますが、でもねー、そういうのって、芸術的才能についても所詮二流レベルの話じゃないんだろうかという気がしませんかねー。

 本文中にあるんですが、カラヤンについては少しおくとしても、フルトヴェングラーといえば、人類の生んだ音楽家・指揮者の全歴史の中でも一等賞級の才能なわけですよね。そんな才能の持ち主が、人格的完成を成すことがまるでなかったというのでは、僕としては、そんなトップを持つ「音楽」という芸術ジャンルそのものの存在意義について、どうしても疑義を持ってしまうんですが、僕が間違っているんでしょうかねー。

 本書は、カラヤンとかフルトヴェングラーという、人類の生んだ一等賞級の才能の持ち主同士が、ベルリン・フィルの指揮者の席を巡って、実にドロドロとした競争を繰り広げるという話なわけです。

 しかし才能と人格の関係と言っても、じゃあモーツァルトはどうだったのだ、映画『アマディウス』を持ち出すまでもなく、モーツァルトに人格的完成など端から期待なんかできないじゃないかと言われればそんな気もしますが、うーん、モーツァルトは、ちょっと違うんちゃうかなー、なんか、フルベンとは、違う気がしますー。

 とにかく僕としましては、二流三流の才能ならともかく、その分野での全人類的規模の第一級の才能が人格的完成とほとんど連動しないのが「音楽」という芸術の属性であるのなら、はたしてそんな「芸術」に、本当に尊敬に値する・愛着を持つに値する価値があるのかということが、よくわかりません。

 もっとも僕自身の中でも本当のところ、僕の上記のような疑問が、芸術とはあまり関わりのない極めて趣味性の高い倫理観から出ているんじゃないかと言う感じは持ってはいるんですが。

 あなたはこの辺の所どう考えますか。音楽的完成と人格的完成は、本当のところ全く関連を持たないものなんでしょうかねー。


にほんブログ村 ポエムブログ 俳句へ
にほんブログ村
スポンサーサイト

テーマ : クラシック - ジャンル : 音楽

コメント

Re: No title

 麻生さん、コメント有り難うございます。
 まー、理性的に考えますれば、麻生さんのおっしゃるとおりですよねー。
 まー、私としましては、人間性というものに、ちょっと、夢見がちなところがあるものでー。

No title

全く関係ないでしょうね。
汚い部分と最上に美しいものは同居し得ますから。
あくまで私は。

Re: No title

 南亭さん、コメント有り難うございます。
 今回のブログのテーマにつきまして、困ったなー(あ、別に困らないですか)というニュアンスで書きましたが、私としましては今はもう少し整理された考えを持っています。
 基本的には、南亭さんのお書きの通り「至芸を享受するならその芸にだけ身をまかせなさい」なのだろうと思っています。
 ただ、感情的な部分が少し残っているんですね。
 もっともそれにつきましても、僕が対象として考える音楽家が「指揮者」だと言うことで、そう考えると彼らの争いが人格的な疑問を感じさせるとしても、まー、分からないでもないかー(あ、これって、指揮者をかなり貶めていますか?)、という感じであります。
 いうまでもありませんが指揮者とは、自分では一音も発しない音楽家であります。

 というわけで、えー、人騒がせな話題で、えー、誠に相済みません。はい。

No title

こんにちは。こちらはやや涼しくなりました。関西はまだまだ暑そうですね。
今回もまたまた興味深いお話を聞かせていただきました。
たしかに芸格と人格。論じるのは簡単ではありませんね。
宇野功芳は、カラヤンのことを味噌くそにけなしていました。
演奏はサッカリンのように卑しく、リハーサルの声すら下卑ている。
このように身もふたもない言い方で、さすがに苦笑を禁じえませんでしたが、
宇野氏はストイックぶっているのではないか、と次第に反発を覚えたものです。
浅慮な私の考えですが、至芸を享受するならその芸にだけ身をまかせなさい。
と言いたいです。よい例があの一茶でしょう。金と財産に執着した嫌らしい性格のどこから、あんな句が出てくるのだろうなどと首を傾げるのですが、やはり佳句を享受してしまうのですね。いつもだらだらとすみません。

コメントの投稿

トラックバック


この記事にトラックバックする(FC2ブログユーザー)