日本音楽の本家本元(前半)

  『雅楽』東儀秀樹(集英社新書)

 最初に述べておきたいと思いますが、なかなか面白い本でしたが、何から何まで面白い本というわけではありませんでした。

 筆者は、1300年続く雅楽を伝えてきた楽家の家系に生まれた方で、宮内庁式部職楽部に勤めていた人です。その後宮内庁を退職し、現在はフリーの雅楽師をなさっているというミュージシャンです。
 まさに本家中の本家、本道中の本道の「日本音楽家」ですね。

 しかしそれ故に、本書には何とも拭いがたく、我が田に水引くところが読めたりもします。そこが読んでいて、少し「違和感」。

 でも、そうなってしまう理由も、よく分かるんですね。
 それは、筆者が書籍(われわれ一般国民が手に取りやすい文庫や新書とか)の世界で、孤立無援とは言い過ぎにしても、ほぼ援軍を期待しにくい状況で雅楽の紹介・宣伝活動をなさっているからです。

 例えば私のことを振り返ってみますに、ぽつぽつと好きで読んでいたクラシック音楽関係の文庫や新書は、気が付けば我が家には百冊くらいありますが、その中に雅楽について触れた本は、本書以外一冊たりともありません。(これって、私固有のことではないですよね、きっと。)
 「孤立無援の宣伝活動」とは、あながち誇張表現でもないことが分かります。

 しかし、「我が田に水引く」と私が感じてしまうとは、例えばこんな部分です。

 一二音階というのは、クラシックを基本軸にしてヨーロッパで確立されたと世界中でいわれているが、僕はこれは大きな間違いだと思っている。一二音階を、確立して系統立てたのがたまたまヨーロッパ人が先だったと言うだけで、東洋の国々、中国や日本にも千年以上前から一二音階はあったのだ。自然の中で生活している人間なら誰もが発見しうるもので、地球上いたるところで、同じような音楽の発見はあったはずだと僕は考えている。


 ……えーっと。
 秋になって、リンゴの実がたわわに稔り、ぽとりぽとりと落ちていきます。
 地面にリンゴが落ちる現象は、リンゴの木さえあれば世界中であったはずであります。
 しかし、そこから万有引力の法則を発見し、「系統立てた」のは(一応、このエピソードが本当だとして)、ニュートンが人類史上では初めての人でした。
 大事なのは、そういうことですよね。

 でも、私は本書を、批判的に取り上げようとしているのではありません。
 次々回に、それを。


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テーマ : 読書記録 - ジャンル : 小説・文学

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