漱石のすばらしい手紙を少々

 先週、ちょっとついでがあって、漱石全集の「書簡」の巻をぱらぱらと読んでいました。
 夏目漱石って、やはりすごいですねー。
 二回に分けて、その一部分を紹介してみます。

 そもそも漱石という人は、大層筆まめな人で、たくさんの手紙・書簡が残っています。それも、大変心のこもった手紙が。
 有名な手紙がたくさんあるのですが、そのひとつに、兵庫県の小学6年生の少年に宛てた手紙があります。これは、一種のファンレターでしょうか、少年が漱石に送った手紙の返事ですが、こんな内容です。
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 あの「心」といふ小説のなかにある先生といふ人はもう死んでしまひました。名前はありますがあなたが覚えても役に立たない人です。あなたは小学の六年でよくあんなものをよみますね。あれは子供がよんでためになるものぢやありませんからおよしなさい。あなたは私の住所をだれに聞きましたか。(大正三年四月二十四日)
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 えも言えない暖かみが伝わってくるような手紙ですね。
 また、漱石は、死ぬほんの一月ほど前にこんな手紙を書いています。宛先は、富澤敬道という二十二才の若いお坊さんです。
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 変なことをいひますが私は五十になつて始めて道に志ざす事に気のついた愚物です。其道がいつ手に入るだらうと考へると大変な距離があるやうに思はれて吃驚してゐます。あなた方は私には能く解らない禅の専門家ですが矢張り道の修業に於て骨を折つてゐるのだから五十迄愚図々々してゐた私よりどんなに幸福か知れません、又何んなに殊勝な心掛か分かりません。私は貴方方の奇特な心得を深く礼拝してゐます。あなた方は私の宅へくる若い連中よりも遙かに尊とい人達です。是も境遇から来るには相違ありませんが、私がもつと偉ければ宅へくる若い人ももつと偉くなる筈だと考へると実に自分の至らない所が情けなくなります。
 飛んだ蛇足を付け加へました。御勉強を祈ります。以上

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 やはり、いいですねぇ。
 「私がもつと偉ければ宅へくる若い人ももつと偉くなる筈だと考へると実に自分の至らない所が情けなくなります。
 飛んだ蛇足を付け加へました。御勉強を祈ります。以上」
というところがとてもいいですねー。
 こんな手紙を貰ったら、いっぺんで漱石にのぼせ上がってしまうでしょうね。

 えー、今回はここまで。




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テーマ : 読書記録 - ジャンル : 小説・文学

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