このきらびやかな天才達の群像

  『小沢征爾さんと、音楽について話をする』小沢征爾・村上春樹(新潮社)

 クラシック音楽が、何も分からないなりに好きなものですから、以前も書いたような気がしますが、それ関係の本を読むのも結構好きです。

 知識として音楽の周辺について知っていても、鑑賞にはあまり関係ないとも思います。(そんな感じの知人がいまして、ご年輩の女性で、特に高齢になってからは視力の減退もあり、音楽関係の本など読むこともないとおっしゃっていましたが、一緒に音楽鑑賞をしていると、こちらがはっとするような一言をさらりと述べられていました。)
 しかし、まー、知識があればそれなりに楽しいこともあると、もっぱら見付ければそんな本を読んでいるのですが、今回の本は、そんな私の音楽関係読書の中でも、飛び抜けて面白かった一冊です。

 そもそも、村上春樹の音楽関係本(音楽関係エッセイ)は、以前よりとても楽しく読んでいました。
 一方小沢征爾の本は、ずっと昔に、氏がスクーターでアメリカやヨーロッパを走り回りながら音楽武者修行をしたという、自伝のようなエッセイを読みました。(しかしこちらの内容は、実はあまり憶えていません。)

 小沢氏の本は、他にも対談を中心にもう少しあったと思いますが、今まで丁寧に読み切れていません。しかし今回、こんなに小沢氏の話が面白いのなら、もう一度じっくりと読み返してみようかなと思ったほどでした。

 では、なぜ本書がこんなに面白いのかといいますと、それは私の鑑賞するクラシック音楽の傾向とも関係があると思います。私が鑑賞するのは、だいたい1960年代あたりから2000年くらいに録音された演奏であります。(もちろん始めの頃のは、レコードをCD化したものですね。)
 そのころのクラシック音楽界といえば(本当のところ私はそんなにも知らないんですが)、たぶん「帝王」カラヤンを中心にした、様々なきら星のごとき天才達の群れであったと思います。

 そして本書に点景のように描かれるのは、そんな天才達が、ことごとく本書の小沢氏の知人であったり(ミレラ・フレーニと我が家で餃子パーティーをしたとか)、お世話になった方であったり(カラヤン先生にはオペラを振ることを強く教えられたとか)、世話をした、或いは一緒に仕事をしあった同輩であったり(グレン・グールドのうちに遊びに行った時の彼の「ヘン」なエピソードとか)、それ以外にもカルロスの話とかパバロッティの話とか、もちろんレニーは出てくるし、本当に読んでいて、唖然とするようなゴージャスな登場人物ばかりであります。

 もちろん落ち着いて考えれば、小沢征爾氏自身が、彼らと肩を並べても全く遜色のない大天才だからだとは思いますが、それは全く眩暈のしそうなきらびやかさでありました。
 たぶん私のような傾向のクラシック音楽を好む人には(そんな方がほとんどだと思うのですが)、本書は間違いなく「破格」の面白さであります。

 最後に、6つある章のうちの(形としては6回に分けて対談を行ったということですね)いくつかのタイトルを書いてみますね。

 「ベートーヴェンのピアノ協奏曲第三番をめぐって」
 「カーネギー・ホールのブラームス」
 「一九六〇年代に起こったこと」
 「グスタフ・マーラーの音楽をめぐって」


 ねっ。
 これを見ただけで、もう、とっても読みたくなってきたでしょ。


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テーマ : 読書記録 - ジャンル : 小説・文学

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