グレン・グールドについてのごく個人的なこと

 『「草枕」変奏曲・夏目漱石とグレン・グールド』横田庄一郎(朔北社)

 バッハについての本を、何となく続けて読みました。
 読んでいると、カール・リヒターとグレン・グールドの名前は、バッハ作品の演奏史にどうしても外せない事がよく分かりますね。そこいら中にいっぱい出てきます。

 改めて言われるまでもなく、ピアニストならずとも例えば『ゴールドベルグ変奏曲』を今後演奏してみよう(CDにしてみよう)と思ったら、よかれ悪しかれ、グールドを一つの定点観測地にせざるを得ませんものね。(と、言うようなことも書いてありました。)
 まー、勿論、どちらの方もバッハにまつわる有名人でありますから。
 でも、リヒターのバッハ関係のお話は、今回は少しおいておきます。

 ごく個人的な話ですが、そもそも私がグレン・グールドの名前を初めて知ったのは、私がクラシック音楽鑑賞を趣味の大きな部分にする以前でした。
 グールドはデビューレコードの『ゴールドベルグ変奏曲』から、一躍センセーショナルに有名になったそうですが、私はそんなことはつゆ知らず(クラシック音楽鑑賞を主な趣味とはしておらず、また年齢的に言ってもリアルタイムでは知り得ず、後年、吉田秀和がこのレコードについて書いている一文を読みました)、30年くらい前に、村上春樹のデビュー作『風の歌を聴け』を読んだ時、そこにグールドの名前が出てきて、初めて知りました。(たぶん)

 ついでの話ですが、村上春樹の『風の歌を聴け』の中の、グールドの名前の出し方がまた、とってもおしゃれなんですね。主人公の男性は、レコード店で一気に3枚(!)のレコードを買うんですが、そのラインナップが、ビーチ・ボーイズとマイルス・デイビスと、そしてグレン・グールドであります。

 というわけで、冒頭の本について、以下簡単に読書報告をしてみます。
 今回いろいろ読んでいると、なるほどグールドは噂に違わず、とても面白そうな(エキセントリックな)人物ではありますが、特に本書の主題は、グールドが後半生、憑かれるように『草枕』を読んでいたというものであります。

 かなり読み込んでいたようで、ノートを取っていたり、そもそも日本語本も含めて4冊ほど『草枕』を持っていたそうです。
 グールドが死んだ後、彼のベッドルームの枕元には、『聖書』とならんで『草枕』があったと書かれてあります。

 彼は漱石の説く「非人情」にあこがれた、いや、「非人情」にあこがれたというより、単純に言えば『草枕』の主人公の画工の生き方に自分を重ね合わせていたようであります。
 彼の理解した『草枕』の画工がどんなものであったのか、今となれば少々疑問の残るところではありますが、でもこれだけでも、グールドという人物は、なかなか興味深そうではありますね、特に日本人にとって。

 しかし、この本のトータルな感想としては、少々ベースの所にグールド・ファンの感情が強すぎる気がしました。
 だから、とりあえず私も面白かったといえますが(私も同じようなものですから)、少し下世話に言えば、女性週刊誌的興味だといえないわけではありません。
 まぁ、そんな本です。私はとても楽しかったんですが……。


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テーマ : クラシック - ジャンル : 音楽

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