古い漫画の話を(その1)

 文芸評論家の小林秀雄が、こんなことを言っています。

 生きている人間というのはやっかいなものだ。次の瞬間に何をやらかすものやら見当が付かない。その点、死んだ人間は、遙かに人間らしい姿をしている。だとすると、人間とは、人間になりつつある過程の存在のことをいうのではないか、と。

 ……と、思い出しながら書いて、はて、この一文は小林秀雄のどんな文章からの引用だったかと考えれど思い出さず、ただこの表現を坂口安吾が批判している文章なら覚えていて、とすれば、私は直接小林秀雄の文章を読んだのではなく、安吾からの孫引きの部分を覚えているのかも知れません。(坂口安吾『教祖の文学』)

 どちらでもいいようなものの、やはり加齢のせいか、いろんな記憶が混乱しつつあります。
 さて、何のためにこんな話から入ったのか、私は、古い漫画のことを書こうとしていたのであります。

 ……思い出しました。私が書こうと思ったのは、小林秀雄が述べる「生きた人間」より「死んだ人間」というように、古いものの方がよくわかるとは、決して思わないと書こうとしたのでありました。

 つまり今から、先日読んでいた古い漫画のことを書くに当たって、古い作品の方がいいとは全くいうつもりはないとまず述べてから、私の読んだ古い漫画について書こうとしたのでありました。

 人気の新しい漫画には、必ずや人気であることに耐える面白さがあると信じています。
 かつて誰の表現だったか、こんな言い回しを覚えています。(細かな言い回しは違っているかも知れませんが。)

 「まだ『スターウォーズ』を一度も見たことのない人や、まだ泉鏡花の『夜叉が池』を読んだことのない人たちがとてもうらやましい。なぜなら彼らは、これから、この上ないすばらしい楽しみを初体験することができるのだから。」

 ……まだ読まぬ新しい作品もきっと面白いと思います。
 ただ私は、私自身がかつて読んだこんなお話もとても面白かったと、小さな声で語りたいと思います。
 その一回目はこんな作品です。

  『菜の花畑のむこうとこちら』樹村みのり(朝日ソノラマコミック文庫)

 次回に続きます。


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テーマ : 読書記録 - ジャンル : 小説・文学

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