森田芳光監督の『それから』

 ふと、文芸映画を見たいと思い立ちまして、……いえ、私のしている事なんてその場の思い付きでほとんど前後の脈絡はないのですが、まー、そう思ったんですね。
 で、何作か、見ました。

 思い付きの取り組みでかつそんなに時間をかけたものでもないので、いきおい我がまま勝手な感想になると思いますが、何回か報告してみたいと思います。

 夏目漱石原作、森田芳光監督の『それから』の映画をDVDで見ました。
 いきなりですが、我が「文芸映画鑑賞企画」で取り上げた中では、今の所一番良かったと、わたくし、思いました。

 まず鑑賞回数を述べますと、『それから』は、たぶん3度くらい見たかなと思うのですが、そもそも私はヒロイン三千代役の藤谷美和子が好きなんですね。

 今回も同様、見方によっては内面性の見事に欠けた藤谷美和子の「特殊」な演技が見たいと、そんなつもりで見始めたのですが、途中から俄然森田芳光監督の手腕というのか、映画のトータルな造りについて興味の中心が移ってゆきました。
 結果、どっしりとしたとてもいい映画だなぁと、感心するに至りました。

 思い返すに、まず時代考証が、……いえ、細かなことはわたくしよく分かりませんが、とてもよかったと思いました。
 主人公長井代助の一族のブルジョワジーな豪邸と、尾羽打ち枯らして関西地方から東京へ舞い戻ってきた代助の友人平岡常次郎の借家との対比が、水際立って素晴らしいと感じました。

 平岡の家の中がまた、とっても暗いんですね。
 それは夫婦仲がよくないから雰囲気的に暗いんでしょうが、今回私が感じたのは、明治時代の日本家屋の、なんといいますか圧倒的物理的即物的な、「非文化的」暗さであります。

 そしてそれは、つい最近とは言わないまでも、やはり日本歴史の上では現在に極めて近い所に位置する時代のことであります。
 司馬遼太郎が、「坂の上の雲」を追いかけてゆく時代と書いた、国がまるごと青春時代のような明治という時代は、現実には、ほとんどの国民の文化度でいえば、ただひたすらに暗く、そして侘びしく苛烈な時代であったのだと思います。

 そういった世相を、藤谷美和子がとぼけて悲しく演じ、松田優作がちゃっかり余裕で抑えて演じます。
 森田芳光監督の確かなセンスと眼力が、思わずうならせる、いい映画だと感じ入りました。まずは、よかったものから。


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