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様々なる読書感想顛末

 『夜のピクニック』恩田陸(新潮文庫)

 よく知らないのですが、この作家は今わりと売れている方だと、あちこちで読んだような気がします。確か、直木賞も最近受賞なさったように記憶します。
 今回読んだこの作品も、新潮文庫にいつも付いているカバーの裏表紙の「宣伝文」によると「本屋大賞を受賞した永遠の青春小説」とあります。

 本屋大賞といえば、あの名作小川洋子の『博士の愛した数式』が受賞したものではありませんか。そして青春小説というのは、小説の持つ本来のエネルギーの源のことでありましょう。
 そこで、私も勇んで読んでみました。

 450ページほどもある長い話ですが、あっという間に読めました。
 読後直後感想、面白いと思いました。
 でも、高校生が主人公の小説なんて読んだのはいつ以来だろう、いや、そもそもそんな小説を私は今までに読んだことがあるのかしらと考えて、思いついたのは庄司薫『赤頭巾ちゃん気をつけて』でした。

 すると、するすると次に浮かんだのがサリンジャーの『ライ麦畑で捕まえて』だったので、ああ、高校生主人公小説にも名作はあるのだと気が付きました。

 と、そんな読後感をあれこれ考えていたちょうどその時、我が読書友達がわが家を尋ねてきまして、いきおい本作の話になりました。
 どう思う? と尋ねたのですが、うーん、何というか、まぁ、控えめに言ってもさほど高い評価を聞くことができませんでした。

 そもそも一つの作品にどんな感想を持つかは、読者のまったき自由であります。
 自分と意見が異なっても、普段はそんな読み方もあるのかと思い、むしろその多様性に感心したりするのですが、ちょっと今回は彼の評価が低すぎたので、別に私がそれをするべきだとは思いませんでしたが、少し「弁解」をしてみました。

 何といっても、作者はストーリーテラーだとは思わないかい。主人公の女子が隠していたと思っていた重大な家庭の事情を、友人がいきなりすっぱ抜く場面なんて実にスリリングな展開じゃないか。
 そもそもが夜を徹して80キロ歩くだけの話なんだから、ずっとそれを描写して飽きさせないのはなかなかの力業の構成力だろう。

 いや、だから、分析の拙さや感覚の鈍感さや発想の幼さは、高校生主人公の心理に寄り添っているからで、君が「ヘン」だという微妙にオリジナルな「三人称文体」も、実験小説めいた工夫のなせるものだよ、と。

 とまぁ、あれこれ言いあったのですが、これだけはうーんと唸って私も賛成の意を表したのが、昔の直木賞は(いえ、本作は直木賞受賞作ではありませんが)もっとどすんと心に来なかったか、という彼の主張でした。

 でも昔の何たらはもっとよかったなんて発想は、精神の老化、何の意味もないと思い直し、やはり私は本書をとても印象深く読んだと「総括」したのでありました。


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