『夕顔』白州正子

   『夕顔』白州正子(新潮文庫)

 少し前、ある雑誌に、この本文の一部が載っていたのを読みました。
 確か家に1、2冊読んでいない白州正子の本がなかったかと探してみると、やはりありました。

 買っていただけでまるで読んでいません。
 冬眠前の動物達のように、ただねぐらに貪欲に集めていただけですが、たまにそんなのが後でとても面白いことがあって(本当はそんなことめったにないのですが)、なかなか本を買うのがやめられませんね。

 で、読んでみました。随筆集です。

 そもそもなぜ白州正子をねぐらにくわえ込んでいたかというと、小林秀雄・大岡昇平・青山二郎・吉田健一なんかとお友達(吉田健一なんか「健坊」でありますが、でも「健坊」を書いた随筆は良かった)ということで、いかにも、日本文学保守本流。

 筆者は、本家が薩摩閥で、知人は財界・政治家に広く、自らは文学をはじめ、いわゆる日本文化・芸能全般についてのトータル・ディレッタントといったところ。なんかそのまま国語の教科書あたりに顔を出しそうな人で、……ということです。

 しかし、教科書好みという先入観は、まぁ間違いありませんでしたね。
 じゃそんなもの、つまらないじゃないかと言われると、いや、まー、少しはそんな気もしないではありませんが、しかしこれはこれで、いかにも背筋がしっかり伸びていて、読んでいてとても快い随筆でした。
 「品格」とか言ってしまうと、ちょっと身も蓋もない感じではあるのですが、まぁそれに近いものでしょうかね。

 たとえば「文化」とか「伝統」とか言った言葉は、改まって使われると少しうさんくさい気がします。こいつ、何か政治的な意図があるんじゃないかなどと、特にきな臭い昨今は感じてしまいます。

 しかし実際、眼前の小さな作品や「物」が、実作者の意識とはおそらく無関係に、ふいにそしてさりげなく、あるいは圧倒的に、享受者・鑑賞者に迫ってくる時があるものです。そんなもの、あるいはそんな時をこそ、我々は本当に「伝統の」とか「伝統的」とかいうのでしょう。
 そしてこの本には、時にそれを感じさせるものがあるように、僕は感じました。

 なかなか、初秋に落ち着いた随筆が読めて、よかったです。
 いよいよこれからが「読書の秋」の本番ですね。
 少し、わくわくしています。では。

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テーマ : 読書記録 - ジャンル : 小説・文学

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