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中学生三年生への眼差し

  『ひとり』吉本隆明(講談社)

 親戚に学校図書館に勤めている者がいまして、我が家が、公立の図書館のそばにあることを言ったら、それは利用しない手はありませんと大いに勧められました。

 そこで、家のそばの図書館に行き始めたら、なるほど、これは便利だ、と今更ながらに気づきました。

 昔と違って、家にいるままでも図書館のホームページからいろんな事ができて、書籍をネット経由で予約したら、貸し出し準備ができましたとメールまでくれて、本当に至れり尽くせりです。

 で、そのことを上記の親戚に言いますと、その利用の仕方で結構だが、もっともっと自由に図書館を利用すればいいと、さらにアドバイスを貰いました。

 自由にとは、例えば写真集のたぐいをぼーっと見るために借りる、例えば一冊の本の中の少しだけを読むために借りる、そして、特にお勧めなのはティーンエイジャー用の本で、これはなかなか面白くてためになるとのことでした。

 なるほど、この年になって十代用の書籍を自分が買うことは、まず考えられないなと納得し、そこで借りた一冊が本書です。
 この本は「15歳の寺子屋」というシリーズのものです。寺子屋感覚で15歳、つまり中学校生活最後の生徒たちに語り掛けるというシリーズテーマの本です。

 そんなコンセプトの一冊で、タイトルが「ひとり」で、そして筆者が吉本隆明とくれば、これはどんなことが書かれてあるのかと大いに興味が湧いたのですが、その期待通りのとてもいい本でした。

 本書は基本的に、筆者の半生の経験からの話と、小説に例をとった話で書かれていました。
 ということはつまり、私の興味の「ストライクゾーン」であります。

 例えば芥川龍之介の名作『蜜柑』を論じて、創作の本質は「転換」にあると説いてあったり、森鴎外や夏目漱石は、人の心に無言のうちに溜まっていく微かなものがあることをよく知っていた人だから、相当いい文学者なのだとか書かれています。

 また、自分が15歳だった頃、宮沢賢治をとても熱心に読んでいて、ひょっとしたら自分も宮沢賢治になれるんじゃないかと本気で思い込んでいたとかも書いてあります。

 少しネットで調べたのですが、吉本隆明は2012年に87歳で亡くなっています。本書の初版発行は2010年です。
 「戦後思想界の巨人」と呼ばれ、海千山千のすれっからしのインテリゲンチャのような筆者ですが、亡くなる2年前の、中学生三年生に対する眼差しはとても優しく誠実で、なんだかほっとするような一冊でした。

 なるほど、ティーンエイジャー用の書籍は侮れません。


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