スポーツはスポーツにのみ奉仕する

  『スポーツとは何か』玉木正之(講談社現代新書)

 この筆者は、スポーツ・ライターとして、僕がかなり信頼している人です。
 一時期、日本のスポーツ界のあまりの堕落ぶりに絶望して、スポーツ・ライター廃業宣言を行ったたようですが、また書き始めていらっしゃいます。

 何冊か同筆者の本を読みましたが、スポーツに対する視点が一貫して、決してぶれないところが、非常に好感が持て、そして評価の高いところだと思います。

 そのスタンスは一言で言うと、スポーツは芸術であり文化であり、あたかも文学が文学にのみ奉仕する如く、スポーツはスポーツにのみ奉仕するものである、といったまとめ方になるでしょうか。

 時あたかも、来年に冬季オリンピックを控え、国際大会に於けるスポーツ・ナショナリズムや、また、メダルの数云々が、マスコミに取り上げられることも多くなりつつあります。
 しかし、本書においては、玉木氏は、本来のスポーツとそれとは、全く無縁のものであると言い切ります。

 そしてついでに少し触れておくと、現在のオリンピックの多くの「堕落ぶり」は、そもそも近代オリンピックの父と呼ばれるクーベルタンの思想の中にすべてその萌芽があると説いています。

 さらに、そうであるにもかかわらず、オリンピックが現在も継続されているという、その一点に、スポーツの、あるいは「人類」の、未来の希望が見えると、玉木氏は説きます。
 なかなか穿った見方でありますね。

 自分でゲームをする。
 あるいは、自分の目で耳でしっかりとゲームを鑑賞する。
 そういったスポーツに対する素朴な態度以外のものが、いわゆる悪しき勝利至上主義を生み出すのだという、一貫した作者の主張は、僕にとっては、この作者のどの作品の底にも流れる、心地よいテーマであります。

 なかなか気持ちのいい本でした。


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テーマ : 読書記録 - ジャンル : 小説・文学

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